よくみられる症状
肛門が出っ張ったり膨らんだりしている
内痔核(脱肛)、血栓性外痔核、肛門ポリープ、直腸脱などが考えられます。比較的まれですが、直腸にできた大腸ポリープが脱出する場合もあります。大腸ポリープは肛門ポリープと異なり、大腸がんに進むポリープもあります。
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肛門科は、はっきりした自覚症状があっても場所が場所なだけに、女性は特に受診をためらってしまい、ひとりで悩んでいる方も少なくないと思います。実は、女性は妊娠・出産やホルモンの影響で便秘にもなりやすいため、おしりのトラブルになりやすいのです。
また、大腸がん、直腸がん、肛門がんなど、重篤な病気が隠れていることもありますので、お気軽にご相談ください。
内痔核(脱肛)、血栓性外痔核、肛門ポリープ、直腸脱などが考えられます。比較的まれですが、直腸にできた大腸ポリープが脱出する場合もあります。大腸ポリープは肛門ポリープと異なり、大腸がんに進むポリープもあります。
肛門科外来で最も良く見られる症状で、痔核(イボ痔)、裂肛(キレ痔)などが考えられます。
しかし、大腸がんや慢性の大腸炎など大腸の病気である可能性もあり、その場合には診断の遅れは許されませんので、大腸内視鏡検査で専門的に診察する必要があります。
裂肛(キレ痔)、血栓性外痔核、肛門周囲膿瘍、または脱肛などの疑いがあります。
肛門部皮膚炎(湿疹)のほか、時に肛門部白癬、肛門部カンジダ症の疑いもあります。
直腸の粘膜に静脈瘤が形成され、イボ状になったものを内痔核といいます。内痔核ができると排便時に出血したり、肛門の外に飛び出て、激痛を感じたりします。便秘などによる排便時のいきみや長時間、座りっぱなしの姿勢などが原因となりますので、注意が必要です。
内痔核は肛門より少し奥にできるものです。排便時に出血を伴いますが、普通、痛みはありません。ただ、痔核が肛門で締め付けられると激しく痛むことがあります。これを嵌頓痔核(かんとんじかく)と呼びます。
診断に際しては、視診・触診の他、肛門鏡、直腸鏡などによる観察も必要です。大腸がんなどが潜んでいる場合もありますから、下部消化管内視鏡検査が行われることもあります。
治療は手術による切除と最近ではALTA療法と呼ばれる注射による治療が中心となります。日常的には、腸内環境を整え毎日スムーズな排便を行うこと、長時間同じ姿勢で座り続けないこと、などが大切です。
肛門上皮と直腸粘膜との境目を歯状線(しじょうせん)といいます。歯状線の下の肛門上皮にできた、イボ状の腫れものが外痔核です。痔には、痔核(じかく=いぼ痔)、裂肛(れっこう=切れ痔)、痔瘻(じろう=あな痔)の3種類があり、いずれも良性です。男女とも一番多く見られるのが痔核です。
便秘や排便時のいきみなど、不適切な排便習慣が元となって発症します。排便時に肛門部分にうっ血が生じ、そこに血栓ができると痛みます。短時間で肛門周辺の静脈にうっ血による血栓が生じ、それが膨らんだ場合には激痛が走ります。これを血栓性外痔核と呼んでいます。
視診、触診、肛門鏡の他、大腸ポリープを見極めるために、下部消化管内視鏡検査やバリウム検査などが行われることもあります。日常生活に支障がある場合には切除が行われるケースもありますが、そうでない場合、座薬や軟膏による保存的治療が選択されます。
肛門上皮にできた、イボ状の腫れものを外痔核といいます。その外痔核の中に血の塊である血栓ができる病気が血栓性外痔核です。排便時に強くいきむ、長時間イスに座り続ける、冷え、アルコールの大量摂取、刺激物の過剰摂取など、肛門周辺への強い刺激が原因となって発症すると言われます。主な症状は肛門周辺の痛みですが、腫れが破れて出血することもあります。
検査は、問診、視診、触診が中心ですが、重篤な病気が隠れている場合もあるので、下部消化管内視鏡検査が行われることもあります。軟膏や座薬による保存療法の他、痔核からの出血量が多い時には、痔核の摘出を必要とする場合もあります。
長時間いきまない、腹圧を長い時間かけ続けない、辛い香辛料や大量のアルコール摂取を避ける、といった生活習慣を身に付けることは予防措置として有効です。
裂肛は切れ痔とも言い、肛門近くが切れた状態のことです。切れ痔が慢性化すると潰瘍や肛門狭窄などの合併症を起こすこともあるため、注意が必要です。
固い便が肛門を通過し、肛門上皮が裂けることで起こりますが、下痢やクローン病と呼ばれる炎症性腸疾患に関連して発症する場合もあります。裂肛は、出血と排便時の痛みが典型的な症状です。排便後に痛みが持続することもあります。
問診、視診、触診が基本的な検査となりますが、ポリープ、潰瘍、更には大腸がんなどを調べる為に、下部消化管内視鏡検査やバリウム検査などが検討されるケースもあります。
便通をコントロールする為の整腸剤や軟下剤、肛門周辺の痛みの緩和や血流改善の為の塗り薬などが治療法として知られています。内肛門括約筋の切開や皮膚弁移動術などの外科的治療が行われることもあります。
痔核(じかく=いぼ痔)、裂肛(れっこう=切れ痔)、痔瘻(じろう=あな痔)の3種類は、肛門の3大疾患と言われています。この内の痔瘻は、肛門小窩と呼ばれるくぼみに細菌が侵入し、肛門腺の中で化膿してトンネル状に繋がり、膿が出る状態を言います。頻度は稀ですが3大疾患の中で唯一、がんとの関連性が指摘されています。
侵入して化膿する菌は主として大腸菌です。膿が肛門周辺に溜まって肛門周囲膿瘍(こうもんしゅういのうよう)を起こし、それが進行すると肛門に向かうトンネルが出来上がります。それが痔瘻です。肛門周辺の腫れや痛み、発熱といった症状が出ますが、直腸の深いところにできると自覚症状に乏しく、発熱だけ、というケースもあります。
視診、触診、肛門指診、肛門鏡が主な検査方法ですが、超音波やCT、MRIといった画像診断なども有効です。
痔瘻の治療は外科的手術が基本となります。瘻管(ろうかん)という膿の通り道を切り開く瘻管開放術、瘻管全体を切除する瘻管切除術、瘻管の中にゴム或いは糸などを通し、組織をゆっくり切り取るシートン法、などの手術方法がケースにより使い分けられます。
肛門皮膚と直腸下端部の境目には、小さな窪みである肛門小窩(しょうか)があります。ここに大腸菌などが入り込むと肛門腺が化膿することがあります。その炎症が肛門小窩(しょうか)に留まらずに周囲に波及することを肛門周囲炎と呼んでいます。
軽症であれば、違和感や不快感だけに留まりますが、炎症が悪化すると肛門周囲膿瘍(のうよう)へと進むことがあります。激しい痛みと発熱があり、切開して膿を出さなければなりません。
検査は、問診、視診、触診及び肛門鏡により行われます。触診では、歯状線(しじょうせん)の圧痛の有無を確認します。炎症と痛みを抑える為に消炎鎮痛剤が使われますが、内服薬の他、座薬や軟膏などのタイプもあります。炎症が激しい場合には、手術が行われることもあります。
人に感染するウィルスは8種類あると言われますが、最も代表的なものが単純ヘルペスウイルスです。このウィルスが原因となって発症するのが肛門ヘルペスという皮膚の病気です。肛門周辺に水泡が現れ、これが破れるとびらんを形成します。ピリピリとした痛みを強く感じるようになります。ヘルペスウイルスというのは、長期にわたり人の体内に潜伏し、免疫力が低下すると活動を再開します。肛門ヘルペスの場合も同様で、再発することがあります。
病変部の分泌物を採取し、単純ヘルペスウイルスの存在を確認する検査が行われます。血液を採取して、ウィルスの抗体を調べる場合もあります。治療には抗ウイルス薬が用いられます。痛みに対しては鎮痛薬が使われることもあります。
細菌感染によって皮膚が化膿する疾患の総称が膿皮症です。膿痂疹(のうかしん)や蜂窩織炎(ほうかしきえん)などは急性の疾患です。臀部や腋窩、頭部などに発生し、ゆっくりと細菌感染を繰り返すのは慢性膿皮症という皮膚疾患です。肛門周辺の皮膚の下が化膿するのは臀部膿皮症と呼ばれる病気です。
発症の原因ですが、毛穴の閉塞によって細菌感染を起こすと考えられていますが、完全解明には至っておりません。黄色ブドウ球菌や大腸菌が原因菌であるとされています。
痒みから次第に痛みへと症状が変化します。皮膚が厚く、固く変化し、やがて膿が出るようになります。がん化するケースも稀にあります。
治療方法は外科的手術に頼ることになります。病変部位を全面的に切除します。皮膚の移植が必要な場合もあります。
直腸脱(ちょくちょうだつ)とは、直腸を支える骨盤底の筋力低下により、直腸を骨盤の中に収めておくことができなくなり、肛門の外に飛び出てしまう状態のことを言います。よく似ている病気に脱肛がありますが、脱肛は飛び出るのが直腸の一部であるのに対し、直腸脱では直腸の壁全体となります。
筋力低下は、加齢、妊娠、出産や慢性的便秘によりお腹に力を加える習慣があることなどが原因となって起こるものです。
肛門の外に出た直腸は、デキモノとして認識されることになります。進行すると肛門の中に押し戻すこともできなくなります。また、便失禁が生じる場合もあります。
視診により確認されますが、骨盤の筋肉の状態を調べる為にMRI検査を行うことがあります。排便習慣のコントロールや食生活の改善、下剤の使用などの保存療法、若しくは外科的手術が治療方法となります。
直腸瘤(ちょくちょうりゅう)とは、女性特有の病気で、肛門の拡がりに較べ直腸下部がより大きく拡がりすぎて、排便障害を起こす病気です。直腸膣壁弛緩症やレクトシールといった別名があります。
直腸と膣の間が薄くなってしまうことや、骨盤を構成する筋肉が弱くなることで、直腸が膣の方にせり出すことが原因とされています。加齢や妊娠、出産、重たい物を運ぶ習慣、気管支炎などによる慢性的な咳などが遠因となるものです。便秘と膣の膨満感が典型的な症状となります。
直腸診や造影剤を用いた画像検査などにより状態を確認します。自覚症状も無く、日常生活に支障が無い場合には経過観察となることもあります。治療する場合は、排便習慣の管理や食生活の見直し、水分補給などの保存療法が中心です。便を柔らかくすることが第一で、酸化マグネシウムが処方されることもあります。
粘膜脱症候群(ねんまくだつしょうこうぐん)とは、直腸に潰瘍、あるいは隆起性の病変が生じる病態を言います。慢性的な便秘で強いいきみで腹圧を掛けることによって直腸粘膜が損傷を受けて発症するものです。直腸粘膜が肛門外へ脱出します。排便時の出血や粘液の分泌、残便感といった症状を示します。
恥骨直腸筋は、排便時に緩んで肛門が開くのが普通ですが、粘膜脱症候群では、恥骨収縮筋が締まってしまい、いきみを生む原因となります。
検査では、病理検査と大腸内視鏡検査が行われます。治療は、高繊維食の摂取、緩下剤や坐薬を用いた軟便化などの保存療法、結紮切除術と呼ばれる、根元を結紮して血流を止めてから切除する手術、内視鏡による粘膜下層剥離術などの施術が症状に応じて行われます。
痔核や裂肛など、明らかな肛門周辺の疾患が認められないにも関わらず、肛門の奥に痛みを感ずる病気を突発性肛門痛といいます。特に夜間に痛むケースが多いと言われます。原因は解明されていませんが、不安やストレスといった心理的要因によるもの、若しくは肛門周辺の筋肉の痙攣によるものと推定されています。
肛門鏡や大腸内視鏡による検査が行われますが、根治的な治療法は見当たらないのが現状です。保存療法の一環として外用薬や内服薬、精神安定剤などが処方されることがあります。